それまでキーホルダーというのものを、わたしは自分のカギに付けたことがなかった。ただでさえ、普段は邪魔になるカギ束に、どうして余計なものを取りつけるのか理解できなかったからだ。
もちろん非常時に防犯ブザーとして使用できるものはある程度認めるが、少なくとも何の機能も持たない「単なるキーホルダー」について、わたしはまったく興味がなかったというわけだ。

しかしこの前わたしの孫娘たちがプレゼントといってくれたのは、まさに「何の機能ももたない単なるキーホルダー」だった。
そのキーホルダーは、確かに通常みかけるものとは少し違っていた。たとえばプラスチック製品でアニメ化何かのキャラクターのようなものであったなら、確かにわたしもかなり困ったことだろう。わたしの孫娘たちも、わたしのそういうところに配慮して、なんだか少し高級そうな革製のキーホルダーをプレゼントしてくれたのだ。

そのキーホルダーには、なにかアルファベットでロゴのようなものが刻まれていたのだが、そもそもブランド物に疎いわたしにとって、いったいそれがなんなのかは見当もつかなかった。ただし、このあいだ所用で会社に訪れた際、たまたまそのキーホルダーを見た若い社員が、なにか感嘆の表情を浮かべていたので、おそらく世間的にはそれなりの認知度のあるものなのだろう。

そして今日、久しぶりにその孫娘たちが遊びに来るというので、わたしはわざと見える場所にベントレーのカギを置いておいた。もちろん、あのキーホルダーを付けた状態だ。
孫娘たちは家に着いて早々に、ドライブに連れて行けと言いだした。これ幸いとばかりにわたしは「じゃあそこにあるクルマのカギを取ってくれ」と言った。
しかし、孫娘たちはそのカギを見つけることはなかった。うちの愛犬が美味しそうに本革製のキーホルダーを噛んでいたからだ。犬のヨダレでベタベタなそれを発見したのは、孫娘たちが帰って一週間もあとのことだった。